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東京歯科大学の奥田名誉教授が情報提供

新型コロナウイルス感染拡大で緊急事態宣言が出され、その終息は見えてこず、歯科医療機関においても診療を中止、縮小するところが増えている。この過酷な現状において東京歯科大学名誉教授の奥田克爾氏は3月初めから「歯科医療機関での新型コロナウイルス感染予防」と題した情報を、いくつかのホームページで掲載している。4月13日に更新した「新型コロナウイルスパンデミックでのオーラルヘルスを考える」の概要を紹介する。

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アメリカ歯科医師会研究所初代所長やアメリカ歯科医師会会長を務めたWeston Price(1870〜1948年)は、100年前のスペインインフルエンザ(H1N1型)のパンデミック時にアメリカ人とイギリス人260人を調べた結果を報告している。

それによると、歯科感染症のあった人は、インフルエンザに羅漢した群で72%に達し、重篤者が多かったが、歯科感染症のなかった人の確率は32%だった。

エンベロープを持つインフルエンザやコロナウイルスは、標的とする細胞レセプターに吸着してウイルスを包む膜と細胞幕を融合して侵入し、ウイルス遺伝子を包む殻を脱ぎ、RNAを宿主細胞内に放り込み、寄生した細胞のタンパク質合成系やエネルギー系を借用してRNAを複製し、ウイルス粒子を増殖させる。

インフルエンザウイルスのHA抗原は、感染する細胞が出す細胞のタンパク質分解酵素に加えて、咽頭などに感染するブドウ球菌などのトリプシン様タンパク質分解酵素の作用を受けて活性化して起動粘膜上皮細胞に侵入させる。

歯周病原性レッドコンプレックスを構成する細菌種は、すべてトリプシン様タンパク質分解酵素を産生するため、HA抗原に作用して細胞侵入に加担すると考えられる。

感染した細胞内で増殖したインフルエンザウイルス粒子は、表面にあるノイラミニダーゼ活性を持つHA抗原を使って満杯になった細胞から抜け出し、次の細胞に侵入、増加して感染を拡大する。

季節型インフルエンザウイルスは、上気道粘膜細胞で数を増やす3〜5日の間に高い発熱を起こす。同時にウイルスを攻撃する特異抗体が作られ、その獲得免疫によって治癒するが、糖尿病などの易感染性宿主の患者は肺炎を起こしやすく、命を奪われる危険性が高い。

進行した口腔感染症による免疫機能の低下やオーラルフレイルによって易感染性宿主なってしまうと感染リスクが高くなる。したがって、歯科治療は、新型コロナウイルス感染リスク低下に貢献しているといえる。

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奥田教授らは、デイケアに通う要介護高齢者に対して歯科衛生士が口腔清掃を中心にオーラルフレイルを実施した場合、インフルエンザの羅漢率が低下することを発表している。歯科疾患のある患者や口腔清掃のままならない高齢者の口腔細菌数は数千億個になる。それら細菌が産生するタンパク質分解酵素やノイラミニダーゼは、上気道粘膜を覆っている唾液の糖タンパクを溶かし、さまざまなウイルスのレセプターを露出させ、ウイルスの吸着を許すことになる。

口腔内に慢性疾患がなく、口腔清掃の良い人はインフルエンザだけでなく、新型コロナウイルス感染リスクも低下するものと考えている。

新型コロナウイルスへの歯科医療現場での感染予防対策については

 1. スタンダードプリコーション遵守
 2. 発熱患者へは緊急処置と投薬などに限定する
 3. 処置前の抗菌性洗口液によるガラガラ嗽(うがい)をさせる
 4. 診療室の頻繁な消毒と換気
 5. 診療機関スタッフに発熱のある場合は医療現場に立ち入らない

の徹底といえる。

現在、さまざまな抗新型コロナウイルス薬や治療薬が開発され、その使用成果や治験が始まっている。また世界中で叡智を結集して感染予防ワクチン開発に取り組んでいるが、その実用化には時間がかかる。

歯科医療と口腔ケアは新型コロナウイルス感染リスクを低下させると認識して、厳格な感染予防をしながら取り組まなければならない。

以下の記事を参考・引用いたしました。